宗太郎の姿をおゆうの長屋で見つけた八十吉。
「宗太郎・・・・・・山本広之進だな。お家の金を持ち出した、山本広之進だな・・・これが女郎のおゆうだな!」
「宗太郎様!」駆け寄って宗太郎の後ろに隠れるおゆう。自然とかばう形になる宗太郎。八十吉やお銀の眼には、どう見ても深い仲のように見えます。
怒りにふるえ、そばにあった包丁を手にとり振りかざす八十吉。まだ、事態が飲み込めない宗太郎は、穏やかに諭すように
宗「八十吉さん?・・・乱心したか?・・・・なんの真似じゃ・・・」
八「それがし・・・高代藩元家老、山岡網右門!」
・・・凍りつく宗太郎。
八「これは考左右衛門が妹、お菊!町人さ、身をやつして、江戸さ出てきたのは、おめえをひっ捕らえるため!女郎を見受けしたおまえの責めを負って考左右衛門は切腹いたした。おめえは女郎との思いをとげ・・・せがれはもっと生きていたかっただろうに・・・腹を切った。切腹は名誉の死であるが、考左右衛門の無念・・・あまりにもせつねえ!」
泣き崩れるおゆうの横で、一点を悲しげに見つめる宗太郎・・・。
八「・・・お前だけのうのうと生かしておくわけにはいかねえ!」
包丁を振り上げる八十吉。黙って眼を閉じ、受けようとする宗太郎・・・。
おゆうが止めに入ります。
おゆう「悪いのは私です!斬るなら私をきってください!」
もみ合う二人。それまで黙っていたお銀が割って入ると、おゆうを突き飛ばします。
銀「引っ込んでおれ!安っぽい言葉!身の毛がよだつわ」
その表情は、きりっとして町娘からすっかり武家の娘に変わっています。
宗太郎、手をつくと、
宗「山岡様・・・・・・お・き・く・様・・・・斬ってくださりませ・・・」
その姿を見下げながら、お銀は、お菊様と呼ばれたことで、恋が終わったと、思います。
八「よかろう。考左右衛門と同じように腹を切れ。名誉の死さしてくれる。」
おゆう「やめてください!私が何もかも話し」
宗「(遮って)黙っておれ!何か言うたらたたっ斬るぞ!」
いぶかしげな表情をする八十吉・・・。
宗「・・・山岡様・・・。ひとつだけ、頼みを聞いてくれませぬか。母の遺骨を墓におさめること、お聞き届け頂きとうございます・・・。」
八「考左右衛門は、親に文したためる間もなく腹を切った・・・」
宗「山岡様・・・我が家は代々、高代家に勤める足軽にございました。もっとも低い身分として、さげすまされる辛さもあったのでございましょう。家での父は鬼でございました。母は背を丸めて耐えたあげく、病に苦しんで死にました。私の身勝手とは存じますが、不幸な母をせめて安らかに眠らせたいと、願っております・・・。」
八「通夜のさなか、その大事な遺骨を打ち捨てて逃げたおまえの喋れることか?」
宗「江戸を離れるつもりが遺骨を思うと去れませんでした。墓に収めましたなら、ただちに斬ってくださりませ。・・・けして逃げも隠れもいたしません」
手をついて、深々と頭を下げる宗太郎。
泣き崩れるおゆう・・・。
八「おめえ、まさか」
銀「(遮って)墓に収めよ。せめてもの情けじゃ」
言い放つと、外にでていくお銀。
でていくと、お銀は、ひとり、堪えきれず、泣きはじめます・・・。
昨晩、「罪のない身であれば、一生大切にいたした」と言ってくれたはずの愛しい宗太郎が、実は、探していた兄の仇で、隠し妻までいて、そして自分達の言いつけに従って、もうすぐ腹を切らなくてはならない・・・。
お銀さん、かわいそすぎです・・・。
宗太郎も、「おきく様」という前に一瞬ためらうとこ・・・切なかったです。宗太郎にとってもそう呼ぶことが恋の終わり・・・
長台詞の応酬みたいなこのシーンも息もつけない感じでした。物語的には最大の見せ場ではないでしょうか。それまで比較的冷静で穏やかな伊藤四郎さんの方言まじりの激怒ぶりも見事だし・・・悲しみをぐっとこらえ、逆に武士の娘の誇りを前面にだすお銀の田中さんの変わりっぷりも目をみはるものがありました。
何より、宗太郎耐える姿・・・がたまらないわけですが、「斬ってくださりませ」と辛く絞り出すように言ったかと思うと、隣のおゆうに「何かゆうたらたたっ斬るぞ!」と一喝・・・。(sなのかmなのか分かんないよっ・・・って暴走ですね。スミマセン)
7話で本気で宗太郎に惚れちゃってる私は・・・八十吉が包丁を振りかざした時、逃げもせず、ぐっと歯を食いしばり受けようとする宗太郎の姿に・・・斬られちゃうんじゃないかって、はらはらしました~。
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